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Mt.6 インタビュー第1回

愛知 和男 衆議院議員 「信じ切る力」

2007年12月14日観光立国基本法が国会で成立。同法の立役者である、愛知和男先生はご自身も名スキーヤー。 昨年、マウントシックスの名誉会長にも就任されましたが、今回、スキーと観光への熱い思いを語っていただきました。

取材・文:時見宗和 写真:樽川智亜希
愛知 和男

 「ちょうど、今シーズンのスキーの予定を一所懸命、手帖に書き込んでいたところでした。はたして今シーズンはいったい何回いけるのか。スキーのことを考えていると、なんだかうれしくなってきますね」 東京・千代田区の衆議院議員第一議員会館の3階のもっとも奥まったところにある一室。取材者の緊張は事務所の主の口からこぼれでた“スキー”の3文字の、なんともやさしい響きに、たちまちのうちに解きほぐされた。
  「はじめてスキーを履いたのは高校の1年生か2年生のころ」で場所は菅平。「スキーのなにもかもが楽しくて」すぐに夢中になった。 ほどなくしてコルチナ・ダンペッツォ(イタリア)で開催された冬季オリンピック、男子スラロームで猪谷六合雄が銀メダルを獲得。1956(昭和31年)年2月、日本列島に朝日新聞の号外が舞い、戦後のスキーブームは沸騰する。 菅平に次いで通うようになった八方尾根のリフトは長蛇の列。並ぶ時間が惜しかったから「歩いちゃお」。スキーをかついで兎平まで登って滑った。 バッジテストを目標に練習を積み重ね、東京大学を卒業後、日本鋼管に就職してから準指導員を取得。1976年(昭和51年)に衆議院総選挙に立候補し、初当選してからも年に4、5回のスキー行を確保。「つい最近まで」杉山スキースクールの1人部屋は定宿だった。 防衛庁長官在任時、北海道の陸上自衛隊部隊を視察した折に、富良野のスキー場で隊員達とスキーをしたという逸話は知られるところだが、つけ加えれば、「あんまりバンバン滑るので」びっくりしている周囲の顔が「じつに痛快だった」。

1人でも行かれるというのは、よほど滑ることがお好きなんですね。
「そういうことになりますか。(笑)」
スキーが楽しいと感じるのは、どんな時ですか。
「どんな時……雪の上にいる時はいつもですね」
海外で滑られたこともあるとうかがっています。
「何回か行きました。もっともつよく記憶にのこっているのはイタリアのチェルビニア。目の当たりにするマッターホルンはほんとうに雄大だった。ヨーロッパ・アルプスのすばらしい景観を堪能しました。10年ほど前の夏、ニュージーランドで経験したヘリスキーもすばらしかった。最初に着陸した斜面が、ヘリコプターに乗ったまま帰ってしまう人がいたほどの急斜面。『勇気を出さなきゃ』と、思い切って滑り始めたら、すこしずつ斜度がゆるやかになり、次第にスキーが新雪に浮き始めて、実に快調。下まで降りるとヘリコプターが待っていて、べつの尾根に連れて行ってくれる。ほんとうに夢のようなスキーでした」
ヘリコプターをリフト代わりに新雪を滑る。
「走る、跳ぶ、泳ぐ。多くのスポーツは自分の力でなんとかしなければなりませんが、スキーはちがいます。大自然の中に入っていき、重力などの外力と一体となるスポーツ。そこにはスキーでしか味わえない気持ちのよさがあって、とくにそれをつよく感じられるのが新雪。いつも滑る機会をうかがっているのですが、国内にはなかなか新雪を楽しめる場所がなくて」
無重力の中をフワフワと漂うような感覚、あれは快感ですね。
「自分からなんとかしようというのではなく、漂いながらコントロールする。つきつめればスキー技術とはそういうものだと思います」
愛知和男議員の滑走シーン

(写真家 一柳定夫氏により撮影された愛知和男議員の滑走シーン)

雪と戦わない。
「そう。だからたまには転ぶのもいい。いいわけになってしまいますが。(笑)でも、転んでも楽しいスポーツはスキーぐらいでしょう?」
―観光は、国際平和と国民生活の安定を象徴するものであって、その発達は、恒久の平和と国際社会の相互理解の増進を念願し、健康で文化的な生活を享受しようとする我らの理想とするところである。また、観光は、国際相互理解の増進のみならず、雇用の機会の増大、地域経済の活性化等国民経済のあらゆる領域にわたりその発展に寄与するとともに、健康の増進、潤いのある豊かな生活環境の創造等を通じて国民生活の安定向上に貢献するものである。(以下略)『観光立国推進基本法案要綱』より―
「観光は究極の“平和産業”。平和でなければ観光は成り立たないし、観光によって文化も習慣も違う国が理解しあえる」。1年あまり前の2006年12月14日に成立した観光立国基本法。議案提案者代表として参議院の答弁の場に立ち、法案成立の中心となった愛知氏は語る 「いかにして観光を振興させるか。第一に魅力がなければ誰も行きません。魅力というものはつくりだしていくものです。そこにしかない魅力をつくり、発信して、お客さんに来てもらう。しかもただ来てもらうだけではだめで、繰り返し足を運んでくれるリピーターになってもらわなければならない。それでは何回も足を運んでもらえるような魅力とはなにか。観光について我々はこのように考え、研究しているわけですが、こうしたことは、そのままスキー場経営にもつながるのではないかと思います」
マウントシックスの現状、どうご覧になっていますか?
「それぞれのスキー場に、心からスキーを愛し、その魅力を信じ切っている人がいると聞きますが、これはとても重要なことです。国土交通省が選定している“観光カリスマ”のように、必死になって外に働きかける人がいないと地域はなかなか栄えない。そういう意味で『スキーはほんとうにすばらしいスポーツなのだ』ということを、信じ切って、声を大にして言う人がいるということは、すばらしいことです。スキー場で働く人たちこそ、滑らなくてはだめですよ。社長が先頭に立って滑って『このスキー場はほんとうにいいんだ』と言い切らなければ」
たしかにマウントシックスにはスキーに対する熱はあると思いますが、その一方で、その熱がうまく集客に伝わっていないように思えるのですが。
愛知 和男
「集客のための特効薬はないでしょう。いろいろな手を複合的に打っていくことが必要だと思います。たとえば、ただスキー場をオープンするのではなく、ターゲットを絞りこむこと。月並みですが、いま、さまざまな場面で話題になっている団塊の世代に照準を絞りこんで、その人たちが喜んでくれるようなプログラムを用意することもひとつの方法だと思います。あるいはシーズン中のある期間は徹底的に修学旅行の受け入れに絞り込む。女性や熟年の方たちに向けたサービスを用意するのでもいい。いずれにしても、これからのスキー場経営には経営的なセンスが求められます。それから “古さ”についても、ここで今一度考え直す必要があるでしょう」
もう少し具体的にお話し頂けますか?
「マウントシックスはいずれも歴史あるマウンテン・リゾートであり、私たち日本人の故郷のような場所ばかりです。新しい施設はお金があればいくらでもつくることができますが、故郷はつくろうと思ってもつくることはできない。一度、壊してしまったら二度と元にもどすことはできません。すなわち、マウントシックスの“歴史”や“古さ”は、ただそれだけで絶対的な価値であり魅力なのです」
“古さ”のなにを魅力としてアピールすればよいのでしょうか。
「 “古さ”と聞くと、名所旧跡を連想する人も多いかと思いますが、そういったとくべつななにかがなくても人を引きつけることはできる。たとえば、古くから引き継がれてきた“もてなし”もそのひとつ。その土地土地の方法で、お客さんを心からもてなせば、かならず、また足を運んでくれる。あるいは“料理”でもいい。伝統の味はきっと人の心をつかむと思います。いまの日本のスキー場で、お客さんをもてなすというセンスがあるスキー場はほとんどないと言っていい。マウントシックスのような古いスキー場、地元のスキー旅館こそがやるべきことだと思います」
目に見えるものばかりが魅力ではない。
「第一にたいせつなのは、それぞれの持つ“古さ”という個性を再認識して、それを外に向かってきちんと発信すること。つぎにそれぞれの“古さ”を連携させることだと思います。どんな魅力的なところでも、ずっといれば飽きる。だけど、6つのスキー場がそれぞれに魅力を持ち、かつ連携していれば、きっと、野沢温泉から草津、草津から志賀へと渡り歩くスキーヤーが出てきます」
温泉めぐりのように。
「そうですね。連携するためのプログラムを用意することは、とても大切なことだと思います」
あとは、いかにしてそれを伝えるかですね。
「日本という国は、ものごとを伝えることがものすごく下手です。日本の伝統や文化、日本のよさを世界に知らせることがうまくできないんですよ」
伝える手段としてはどのようなものが考えられますか。
「インターネットに代表される近代テクノロジーを最大限に活用することはもちろんたいせつですが、しかし、そうはいっても基本は口コミです。人の口から口へと伝わる情報ほど効果的なものはない。“古さ”を前面に押し出していこうということであれば、口コミをより重視するべきだと思います」。
ここ数年、北海道を中心に海外、とくにオーストラリアからやってくるスキーヤーの数が増えてきていますが、このことについてはどうお考えですか。
「非常に良いことだと思いますが、どのようにして受け入れるか、やるべきこと、整えなければならないことが随分沢山あると思います。とくに必要なのは街。スキーが終わったあと、ぶらぶらと散策し、ビールグラスを傾ける場所がないと退屈してしまう」
富良野には海外から来たスキーヤーのために街とホテルを結ぶ循環バスができました。
「日本人は外圧に弱いですから。(笑)まあ、きっかけはどうあれ、プラスになればいいと思います。しかし、街の存在は海外からのスキーヤーに限らず、日本のスキーヤーにとっても必要だと思います。スキーが終わったら温泉と食事で終わりということではなく」
古いスキー場にはかならず街がありますね。
「そうですね。長くそこに住んでいる人がいないと街はできませんから。“古さ”はそういう点においても非常に意味があることです。冬だけではなく、春、夏、秋はどのような生活をしているのか。どのような食べものがあるのか。そこに住んでいる人の生き方を知るだけでも、とても大きな魅力になる。そういうものかにじみ出ているのが古い場所なんですよ」
最後にひとつ教えて下さい。
スキーをやめてしまった人をスキー場に呼び戻すことはできますか?
愛知和男
「できますよ。物置にしまいこんである古いスキー板は長すぎて具合がわるいでしょうけれど。(笑)なんとかして雪の上に引っ張りだしてしまえば、もうしめたものです。スキーをやったことがある人は、あの気持ちのよさがよみがえりますから、絶対に」。

「絶対に」というきっぱりとした言葉のあとに、降りたての新雪のようなふんわりとした口調が続いた。 「だって、楽しいじゃないですか」
愛知和男 プロフィール
東京都出身。1976年衆議院議員初当選。以後、環境庁長官、防衛庁長官などを歴任し、2005年に衆議院議員9期目当選。現在は、衆議院議員政治倫理審査会会長、自民党観光特別委員長。



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